23.09.2005 会の構成

ここでは一般的な会の構成、詰め合いと伸び合いについて私的意見を含め記載したい。会については五段以上の昇段審査でよく問われる問題であるので、教本の知識だけではなく、稽古で培った体験を基に自己の意見が書ける事が重要であると考える。

詰合い
人間の骨組みは様々な関節から成り立っており、これを安定させることが的中には不可欠である。 その為には以下の条件が必要である。

  • 正しい矢束を取っている事(弓力の安定)
  • 狙いが正しい事(矢の方向の安定)
  • 胸弦がついている事(弓の安定を計る)
  • 口割り付近に矢がついている事(矢の安定を計る)
  • 三重十文字が完成されている事(身体の安定を計る)
  • 五重十文字の完成 (各部の力の十文字)

これらが引分けの終わりにほぼ同時に完成される事が重要で、それに加え

  • 弓の抵抗力と、弓を押し開いている射手の力が均衡している事(身体の力みが無い事)
  • 各関節同士がしっかりと重なっており、遊びが無い事。(隙間を詰める)

五部の詰めについて 両手首の関節(矢筋に対して素直に表裏の力が重なるように、締まりつつ詰る) 両肩の関節(両肩の線が矢に近づくように、又肩の関節が弓から受ける力によってはまる様に) 胸(肩から左右均等に力が集まり、胸割りにつながる)

更に残り3つを加え、八部の詰めが形成される事により総部の詰め(身体全体の詰め)が完成される。

  • 足(ひかがみと呼ばれる位置が張り、両足の重心・力の方向を安定させる)
  • 腰(腰を入れ、腰骨の下辺り仙骨を安定させ、胴の安定を計る)
  • 腹(気力の張合いと呼吸の詰めを表している)

正しい会の構成(詰合い)により、弓の力を骨格にて、正しく左右均等に受け止める事ができ、緩み・縮みを防ぐ事になる。筋力は骨、特に関節を助ける働きのみにし、最小にして最大の効果をあげるように心がける。詰合いが無い離れでは、個々の関節が自在に動き、緩み安くなる事から矢所が一定しない。

伸合い
理想的には詰合いでの矢先と筈の位置に変化が無く、矢筋に沿って右手親指で弦を払いながら(筈の位置)、同時に左手親指で弓の右角を押しながら(矢先の位置)離れていく事が重要である。そのためには弓力に各関節が負け位置が変化しないように、持続的に筋力が働き続けていなければならず、体感としては常に数パーセントづつ力を加え続けなければならない。矢筋に伸び合い、伸合いのどの時点・地点で離れても的中に結びつくように心がける。 一般的に、伸合いでの力は体全体の総合力であり、背中・肩・腕の筋力は弦を押さえている右手指の力に勝る為に、ある一定時間を越え、気力が伴うと親指を押さえている指の力は相対的に小さくなる、或いは減少するために、この均衡が破られ離れという現象となって現れる。これは各自の筋力と使用している弓の力の割合による。

詰合いと伸合いは実は別物ではなく、常に同時に働き続けている。

  • 五部・八部の詰めを更に詰め合い、安定を計ることにより、各々が締まってくる
  • 弓が最大に働くように矢筋に働き続ける (弓から受ける力の反対方向)
  • 縦横に身体の中心から気力を流しつつ伸び合う

気力と体力のバランス
体力には限界があり、筋力による伸び合いも限界がある。そこで気力によって体力の減退を相殺し、又体力を越えた気力の充実により、三位一体が完成される。体力のみで気力の伴わない射は真の的中とは言えないであろう。又気力は技に勝り、気力発動に伴ってその圧力により弦が右親指から放たれる自然の離れを理想とする。これは何もせずに離れる事を意味しておらず、気力・体力・弓の力が最大にして均一に働いた結果を意味する。

伸合いが無い射は結局右手を開いて矢を放つ事になり、右親指は開きつつ的方向へ引き戻され、矢は的方向へ戻りつつ放たれ、矢尺は相対的に小さくなる。又右手を開くと言うことは、左手の緩みを誘い、詰合いでの力の均衡が崩れやすい。当然矢飛びも悪く、貫通力の無い矢が放たれる。

まとめ
実際の行射に於いては会に到るまでにどれだけ準備が出来ているかが重要である。よって正面打ち起こす場合は大三の位置、斜面で打ち起こす場合は三分の二の位置で最終的な準備を整え、引分けから会まではこのバランスを崩さないように心がける。詰め合いでは理想的な力の受ける、与える方向を決定し、伸び合いでは力をこの方向へ流し続ける作業とも言えるであろう。上記の如く手先で放すのではなく、体力・気力・弓力の総合力で矢は放たれるのが理想でる。詰め合い・伸び合い続ける事によって各部分は締まってくるが、緩む事はない。締まりつつ離れるためには、時間をかけじっくりと伸び合う事により、結果として右親指を押さえている指の比較的弱い筋力が、他の圧力(体全体の筋力・気合・弓力)に対して耐え切らずに放たれることが重要である。三位一体を伴った射は、貫中久に通じ、正射正中への道であると思う。これらが完全に完成される事は無いと思うが、少しでも近づくべく、今後努力を続けたい。