25.10.2005 矢勢について

一般的に良い離れが出たときは、弓が冴え(弦音・弓の収まり)、矢勢が向上する。 矢勢が向上する条件で、道具による影響を除くと以下のようになる。

軽く・早い離れである事(伸び合い)
会での弓の持つ力を10とすると、伸び合いがなく、ただ弓を支えている状態では同じく10の力が必要となる。不動体・静止状態で放した場合、矢にはこの10の力が伝わる。しかし、伸び合いの伴なった離れでは、反動体である弓と弦の反応速度は上記に比べ格段に増し、よって矢に10以上の力が働く。この事から、矢勢は単に弓の力に比例するものではなく、射手の気力の伴なった伸び合い力と離れの速度に影響されると言える。

左手の内の継続的な働きとその速度(左手の内)
弓の回転力も結局上記のように弓という反動体に与えるスピードによって弓の回転速度も上昇し、矢勢も増す。手の内の働きにより、弦が矢を押す距離が長くなり、エネルギー伝達効率も上がる。 弓が捻られる程に弓の反動力は増すが、捻り過ぎの場合は結局弦の推進方向を的方向から外すことになり、よって力が分散し効率性が低下する為に、矢の速度となって現れない。

力の方向が矢筋に合う事
全体の力がどの位効率よく矢に伝わるかも重要である。弓・体の力の方向が少しでも矢筋からズレて伝わった場合は、力のベクトルの角度が増す事により、10+10が20にならず、18・15の力しか伝わらない。五重十文字(力の動的十文字)の完成が鍵を握っていると思われる。 熟練した射手は初心者に比べ、同じ道具を使用しても矢勢・貫通力が強いと言える。

まとめ
現在我々の弓道では、射法・射技の完成と修行道としての精神面が強調されており、これは間違いではないが、一度弓の原点 遠く・強く・正確について考えてみることも重要であると考える。 ただ単に的に中てるだけなら、矢勢がなく、同時緩みによる離れでもいいはずである。しかし、矢勢が出る事は即ち、全ての総合力が効率的に働いた結果であり、よって貫・中・久と正射必中に結びつくと言える。又矢勢を見る事で、弦音と同じく自己の射の判断材料になる。