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8月18日

筈の位置

日頃の稽古では、弦の張り方と筈の番える位置に気をつけることが重要である。先ず弦を張る高さは弓によっても違いがあるが、通常は筈の位置と弓の籐頭の間隔が、並寸で約14.5-15.5cm位、伸び寸で15.0-16.0cm位を目処とする。上関板と弦の間は弦が1.2本入るくらいがよいとされている。新しい弦を使用する際はやや高めに張って伸びたら時計と反対方向へ巻き降ろして調整する。基本的には弦と弓の間隔を優先する。

但しあまり弦が上関板から離れすぎていると、弦が離れの後接触しない為に弦が返ることもある。離れの時は、矢が弓の仰角が戻りきらないうちに弦から離れ、又弦が矢を押す距離が短いので、矢は的のやや下につく。反対に引っ付き過ぎている時は、弦が上関板と衝突した後、擦りながら進む為、弦音は良くなく、矢は上記と反対に的のやや上につく。

筈の位置の変化も矢所に影響を与える。弓を通しての狙いに変化がない場合は、当然のことながら、下に番えると矢先はやや上を向き、的のやや上につく。上に番えると反対に的のやや下につく。

しかし日頃の稽古では、矢は水平に乗っている事が正射正中の条件であるから、矢を下に番えた場合は、矢を水平にする為に左手を下げる必要があるので、実際には矢に下向きの力が必要以上に掛かり、矢は的のやや下につく、反対に上に番えて矢を水平にした場合、矢は的のやや上につく。

出来れば一射毎に弦の状態を目で測る癖をつける様にする。初期には定規等で測って確認するのを勧めるが、何れ目で測れるように修行しなければならない。又矢の箆や筈の状態も同時に行射に入る前に確認しておくと失を未然に防ぐ事になる。

これらは例えば試合、審査で生かす事ができる。通常は行射前にしっかりと確認しておくが、例えば、弦切れで替え弦を張ってもらった時、或は4つ矢で2本残して弦がやや低くなった時等、瞬時に対応することができる。晴れの場では狙いと射形を替える事は望ましくないので、出来るだけ筈の位置と足踏みの幅で調整すると良い。足踏みの幅を広くとると、狙いが同じ場合は矢がやや上を向き、矢は的のやや上につく。反対に狭くとるとやや下につく。

昨年5月に京都大会での予選の演舞で一手束中し、約2時間後に射詰め一本目が行われたときの事、かなり暑かったせいか弦が高温で伸びて、やや低くなっているのを控えで発見した。よって矢をやや上に番えて行射したが、意気込み過ぎの為か、或は矢を引き込み過ぎか、結果矢は的12時の的枠をかすめて外れてしまった。結果残念であったが、鋭い離れで矢勢が良かったので、内容に満足している。この経験からある程度の調整は可能であるが、心の安定無しには射の安定もないということが体験できた。

筈の番える位置は矢所に影響を与える事は上記で述べた。これが一定していない場合は、どうしても射形に悪い影響を与える。これは体が無意識ではあるが、的に中てようとする為に、狙いを変えたり左手の位置を変えたりしてしまうからである。射形を磨き、正射正中を目指す為には使用している道具の一定が先ず条件となる。